歩道切り下げ工事の費用相場は?申請方法から流れまで解説

駐車場へ安全に車を乗り入れるために、歩道の切り下げ工事を検討する方もいるでしょう。
この工事は、歩道の一部を低くして車両の出入りをスムーズにするものですが、公共物である歩道を工事するため、正しい手順が必要になります。また、工事費用も気になるところです。

この記事では、歩道の切り下げ工事に必要な申請から工事完了までの流れや費用の相場、そして注意すべき点について具体的に解説します。

なぜ歩道の切り下げ工事が必要なの?

歩道は、歩行者が安全に通行できるように設けられたスペースです。
そのため、歩道と車道の間には段差が設けられており、車両の乗り入れを防ぐようにできています。

駐車場へ車を乗り入れる際にこの段差が障害となるため、段差を解消するための歩道の切り下げ工事が必要となります。

切り下げ工事を行わなかった場合、車両が段差を乗り越えなければならないため、タイヤや車体に傷がつく可能性があるだけではなく、歩行者や他の車両に危険を及ぼすため、正規の手続きを踏んだ工事が求められます。

乗り入れブロックや段差プレートの使用は道路法違反の可能性あり

歩道の縁石の前に、乗り入れブロックや段差解消プレートを設置して車の出入りをすることは、道路法第43条で禁止されている「道路上の違法設置物」とみなされる可能性があります。

これらの設置物は、歩行者や自転車、バイクの通行を妨げ、つまずきや転倒事故の原因となりかねません。
また、雨水の排水を阻害し、道路が冠水する一因となることもあります。

道路管理者はこれらの違法設置物に対して撤去を指導・命令することができ、従わない場合は罰則が科されることも考えられます。

安全かつ合法的に車両を乗り入れるためには、ブロックやプレートに頼るのではなく、正式な手続きを経て歩道を切り下げる工事を実施する必要があります。

歩道切り下げ工事にかかる費用は全額自己負担

歩道は国や地方自治体が管理する公共物ですが、特定の個人の利益のために行われる歩道の切り下げ工事にかかる費用は、その工事によって利益を受ける人(受益者)が負担するのが原則です。
したがって、自宅の駐車場への乗り入れを目的とする工事の費用負担は、すべて申請者の自己負担となります。

工事を計画する際は、この原則を理解した上で、必要な資金を準備しておく必要があります。

工事費用の相場は30万円~100万円が目安

歩道切り下げ工事にかかる費用の相場は、一般的に30万円から100万円程度とされています。

この金額には、アスファルトやコンクリートの撤去・再舗装、縁石の入れ替えといった現場作業費や材料費が含まれます。また、切り下げ工事の申請を工事業者に依頼する場合は、各種申請手続きの代行費用、設計図面の作成費、工事中の交通誘導員の人件費といった諸経費も発生します。

工事の規模や現地の状況、使用する材料によって最終的な金額は変動するため、あくまで目安として捉えておきましょう。
正確な費用を把握するためには、専門の施工業者に現地調査を依頼し、詳細な見積もりを取得することが不可欠となります。

工事費用を左右する3つの変動要因

工事費用は、いくつかの要因によって大きく変動します。

第一に、切り下げる歩道の幅や長さです。
工事範囲が広くなるほど、使用する資材の量や作業時間が増加するため、金額は高くなります。

第二に、歩道の構造や周辺状況です。
例えば、歩道に街路樹やガードレール、電柱、道路標識などがあり、それらの移設が必要になる場合は、別途移設費用が発生します。また、歩道下の配管状況や舗装の種類によっても工法が変わり、費用に影響を与えます。

第三に、申請手続きの複雑さです。
例えば、2箇所の乗り入れ口を設置したい場合など、特殊な条件での申請は手続きが複雑になり、申請代行費用が更に加算される可能性があります。

歩道切り下げ工事の費用を安く抑えるためのポイント

歩道切り下げ工事は、原則として全額自己負担となるため、できるだけ費用を抑えたいと考えるのは自然なことです。
費用負担を軽減するためには、いくつかのポイントがあります。

具体的には、複数の業者から見積もりを取得して内容を比較検討することや、専門の業者に依頼することが挙げられます。
これらの方法を実践することで、無駄な出費を避け、経済的な負担を軽くすることが可能になります。

詳しく見て行きましょう。

複数の専門業者から相見積もりを取得して比較する

工事費用を適正な価格に抑えるためには、複数の専門業者から相見積もりを取得することが重要です。
1社だけの見積もりでは、提示された金額が妥当であるかを判断できません。最低でも2~3社から見積もりを取り、工事内容や各項目の単価、諸経費の内訳を詳細に比較検討しましょう。
単に総額が安いという理由だけで業者を選ぶのではなく、過去の施工実績や担当者の対応、アフターサービスの有無なども含めて総合的に判断することが大切です。
信頼できる業者に適正な金額で依頼することが、結果的に満足度の高い工事につながります。

専門の業者に依頼する

歩道切り下げ工事を専門的に手掛ける業者に依頼するメリットは、工事費を適正価格に抑えられる点です。専門業者には豊富なノウハウがあるため、適切な人員配置によりスピーディーな工事が期待できます。専門外の業者に依頼すると、工事が外注になるケースが多く、費用が割高になる可能性が高まります。金銭的負担を最小限に抑えたい場合は、外注ではなく自社で施工を行う専門業者を選ぶことが重要です。

歩道の切り下げ工事は個人でできるのか

歩道の切り下げ工事は、業者へ依頼して行うことがほとんどですが、個人で工事することも可能です。

しかし、申請には詳細な工事図面が必要であり、専門知識がないと作成が難しい上に、申請手続きも複雑で、個人で対応しきれないケースが少なくありません。仮に自治体への申請が通ったとしても、工事自体が困難を伴います。切り下げ工事は単に歩道のブロックを交換するだけでなく、車の乗り入れに耐えうるように路盤を強化する必要があるからです。

このように、専門知識のない個人が工事を行うのは難しいと言えるでしょう。

歩道切り下げ工事の申請から完了までの流れ

歩道の切り下げ工事は、単に業者に依頼して施工すればよいというものではありません。公共物である歩道を改変するため、工事前には道路を管理する行政機関や管轄の警察署への申請と、それぞれの許可を得る必要があります。この一連の手続きは専門的な知識を要するため、一般的には施工業者が代行します。

ここでは、工事を計画してから完了するまでの基本的な流れを6つのステップに分けて解説します。事前に全体の流れを把握しておくことで、スムーズに計画を進めることができます。

STEP1:自治体の担当窓口での事前相談

まず最初に行うべきは、工事を希望する場所の歩道を管理する自治体の担当窓口(土木事務所、道路管理課など)への事前相談です。

この段階で、そもそも切り下げ工事が可能な場所なのか、法律や条例に基づく設置基準を満たしているかを確認します。道路法や各自治体の条例によって、交差点や横断歩道の近く、バス停の前後など、安全上の理由から工事が認められない場所や、切り下げ可能な幅、箇所数が決められている場合がほとんどです。

相談の際には、現地の地図や写真、おおまかな計画図などを持参すると話がスムーズに進みます。ここで担当者から工事の可否や、申請に必要な書類、手続きの概要について説明を受けることができます。

STEP2:施工業者の選定と現地調査・見積もり依頼

事前相談で工事が可能であることが確認できたら、次に工事を依頼する施工業者を選定します。
歩道の切り下げ工事は専門的な技術と知識を要するため、同様の工事実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。
複数の業者に連絡を取り、現地調査を依頼しましょう。

業者は現地の状況(歩道の幅、構造、障害物の有無など)を確認した上で、詳細な見積書と工事計画を提示します。
この時、工事費用だけでなく、複雑な申請手続きの代行をどこまで行ってくれるのかも確認するべきポイントです。
担当者の対応、アフターサービスの有無なども含めて総合的に判断することが必要です。

STEP3:道路管理者への工事施行承認申請

施工業者が決まったら、道路管理者(国道なら国の出先機関、都道府県道なら都道府県、市区町村道なら市区町村)に対して、「道路工事施行承認申請」を行います。
これは、道路法第24条に基づく手続きで、「24条申請」とも呼ばれます。

この申請には、工事の目的や場所、期間を記した申請書のほか、設計図、位置図、構造図、現況写真といった専門的な添付書類が必要です。
多くの場合、これらの書類作成から提出までの一連の手続きは、依頼した施工業者が代行します。

審査には数週間から1ヶ月以上かかることもあるため、時間に余裕を持って進める必要があります。

STEP4:管轄警察署への道路使用許可申請

道路管理者からの工事承認とは別に、工事を行う際には管轄の警察署長に対して「道路使用許可申請」を提出し、許可を得る必要があります。

歩道の切り下げ工事では、作業車両の駐車や資材の搬入出、交通誘導員の配置などで、歩道や車道の一部を使用することになるためです。

この申請も、工事の期間や方法、安全対策などを記載した書類が必要となり、通常は施工業者が代行してくれます。
道路交通の安全を確保するための重要な手続きであり、この許可がなければ工事に着手することはできません。

道路管理者の承認と警察署の許可、両方を取得して初めて工事を開始できます。

STEP5:承認・許可後に切り下げ工事の開始

道路管理者からの「工事施行承認」と、管轄警察署からの「道路使用許可」の両方が下りたら、いよいよ切り下げ工事を開始できます。

工事期間は、現地の状況や工事規模によって異なりますが、一般的には数日から1週間程度です。
工事中は、騒音や振動、作業車両の出入りなどで近隣住民へご迷惑をおかけする可能性があるため、事前に施工業者が挨拶回りを行うのが通例です。
また、工事現場では歩行者や車両の安全を確保するため、許可内容に基づき交通誘導員を配置するなど、万全の安全対策を講じながら作業が進められます。

STEP6:完了届を提出して手続きはすべて終了

切り下げ工事がすべて完了した後、道路管理者に対して「完了届」を提出します。この届出には、工事が計画通りに施工されたことを証明するため、工事着手前と完了後の写真などを添付するのが一般的です。

完了届が受理されると、道路管理者の担当者が現地に赴き、申請された図面通りに正しく工事が行われているかどうかの完了検査を実施します。この検査に合格して初めて、一連の手続きがすべて終了となります。

この完了届の提出と検査の立ち会いも、通常は施工業者が代行してくれます。これをもって、公的に工事の完了が認められます。

まとめ

歩道の切り下げ工事を行うには、自治体への事前相談から始まり、道路管理者への工事施行承認申請と警察署への道路使用許可申請などの手続きが必要になります。これらの手続きや工事自体は個人でも行えますが、専門的な知識を要するため、対応が難しい場合があります。切り下げ工事の専門業者へ依頼すれば、申請から工事まで全て任せることができます。

工事費用は全額自己負担となり、相場は30万円から100万円程度が目安ですが、歩道の状況によって変動します。安い費用ではないため、費用面・仕上がり面で納得できる専門業者を選びましょう。

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